かつて、デパートが百貨店と呼ばれていた頃(って、今でも呼ぶ人は呼んでますが)、その最上階には決まって「大食堂」というお店がありました。
入り口には和洋中とりまぜた食品サンプルのショーウィンドウがあって広々とした店の中はずらりと四角いテーブルが並び、お昼時にはファミリー客が席を埋め尽くしていました。
店の雰囲気はフードコートに近かったかな。
但し、料理をセルフで運ぶのではなく店員さんがサーブしてくれるのでもっと高級感、特別感にあふれた場所でした。
ただ、当時の人はあまり気にしなかったのかもしれませんが隣の席の人が何を食べているかがまる見えだったのはちょっと居心地が悪かった気もします。
その点、店の雰囲気は学食風でもありました。
やがてバブル期あたりからデパートに和食なら和食、洋食なら洋食と言った専門店街がひしめくようになり大食堂はいつのまにやら消えていきました。
そのバトンを受け継いだのがある意味ファミレスというお店だと思います。
けど、背もたれの高いソファやパーティションなどでテーブルを仕切って周りから見えない工夫がされているお店が多いところを見るとやっぱり見られるのを気にする人が多かったのかなと思っちゃいますね。
ただ、メニューに並ぶ料理は相変わらず「この店でしか食べられない」特別感にあふれていてそれがお店で食事をするワクワクに繋がっていたと思います。
けど、そんな《特別感》も少しずつ少しずつ、レストランでの食事と家での食事の境界があいまいになってきて薄れて来ている気がするのです。
かつて大食堂やファミレスで食べていた洋食は今ではコンビニでも売られていて買って帰ってレンチンすれば家でも食べられます。
なんなら名店とコラボした商品もたくさんあってお店の味を家でお手軽に食べることもできちゃいます。
そして、店と家の料理の境界があいまいになったもう一つの理由はネットの海にレシピが氾濫していること。
お店に行かなくてもその気があれば自分で作れちゃう──お店で食べるワクワク感が薄れるのはさびしい気もしますが、反面、こんな凝った料理を手軽にランチに出せるというのは良い時代になったなとも思うのです。
【材料】(1人分)
-調理時間:30分-
- ご飯:1膳分
- 鶏むね肉:100g
- 玉ねぎ:1/4個
- 粉チーズ:適宜
[ホワイトソースパート]
- 牛乳:150g(3/4カップ)
- 薄力粉:13g
- バター:15g
- コンソメの素(顆粒):3g
- 塩:1g
- 砂糖(できればグラニュー糖):ひとつまみ
- おろしにんにく:ひとかけ分
- ホワイトペッパー:少々
- クローブ(パウダー):少々
- ナツメグ:少々
- シナモン:少々
【作り方】
- 鶏肉は食べやすい大きさに切ります。玉ねぎはみじん切りにします。
- 小鍋に[ホワイトソースパート]の薄力粉と玉ねぎを入れてごく弱火で3分炒めます。これにバターを加えて溶けるまでよく炒めます。更に冷たい牛乳を加えて中火にし、泡立て器で混ぜながらひと煮立ちさせます。 ※鍋が熱い状態の場合、牛乳は冷たい状態で加えるとダマになりにくいです。
- 2.に鶏肉と[ホワイトソースパート]の残りを加えて弱火で3分煮ます。待っている間にオーブンを230度に予熱します。
- 耐熱皿にご飯を敷き詰め上からホワイトソースをかけてオーブンで15分焼きます。仕上げに粉チーズをたっぷり振ればできあがり。
【一口メモ】
- 「お店の味をご家庭で」なんてキャッチフレーズを付けたくなるくらい本格的で美味しいです。風味を複雑にしてくれているのはおろしにんにくと各種スパイス。ドリアに限らずホワイトソースにはクローブ、ナツメグ、シナモンが良く合います。
- 段取りの良し悪しで調理時間が大きく変わってくる料理です。常に手順を先読みして手を止めないように並行してできる作業はないか考えながらこしらえましょう。
- お好みでタバスコを振っても美味しいですよ。
- 具材は他にもじゃがいもや茸などあり合わせのものを足せばより豪華な料理になります。