2012年に俳優の大滝秀治さんの訃報を聞いた時は少なからずショックを受けました。
芸能人の訃報自体は珍しくもなく昭和から活躍していた俳優さんが亡くなるのは残念だけど仕方がないことというのはわかっているのです。
けど……
ああいう昔からずっとお爺さんだった人はいつまでも死なないような気がしていた。
なんて無責任&無根拠な感慨を覚えたんですよね。
僕が物心ついた時に彼はもうお爺さんを演じておりました。
僕が小学校に上がっても大学生活を送っていた頃も社会人になってからもずっとずっとお爺さんを演じておりました。
何十年も通してドラマや映画で同じ俳優さんを見続けていると
「〇〇も老けたよなぁ」
という感想を持つのが当たり前なのですがこと大滝さんに関しては「老けたよなぁ」という感想を持ったことがなく何十年も同じ年恰好のお爺さんにしか見えなかったのです。
だから──「え、ああいう人も死ぬの」という不条理な感慨を覚えてショックを受けたという。
世の中には昔からずっとそこに同じ姿であったんじゃないかと思えてしまう人や物があるものです。
たとえば過日、娘と僕が学生時代にした旅行の失敗談を話しておりました。
最新の時刻表を買い込んでみっちり計画を立てて出発したのですがその時刻表は3月15日ダイヤ大改正号だったのです。
で、出発したのは3月11日。
行けども行けども時刻表通りに列車が来ない(当たり前)。
宿に着いたのはもう夜中になっておりました。
そこの旅館のご主人は律儀な方だったようで僕の実家に連絡まで入れてくれて出発したことを確かめると警察に失踪届を出そうか相談している最中だったという。
あわや大事になるところでした。
「そんなん旅館に連絡しておけば良かったやん」
と娘は簡単に言ったのですが
「どうやって?」
と僕が訊ね返すとしばらく考えて「あ」と思い至ったようです。
そう。
その旅行に出かけたのは1980年代のこと。
スマホどころか携帯もポケベルも電子メールもない時代です。
公衆電話を探して電話するという手はなくもなかったのですがそのためには一度列車を降りるしかない。
旅行していたのは次の列車まで1時間以上待ちが発生するような田舎。
しかも手持ちの時刻表は全く用をなさずNavitimeのない世界では正しいダイヤが全く分からない。
ただでさえこのままでは宿に着く頃には日が変わってしまうかもとひやひやしていた身としてはただひたすら列車に乗り続けて前に進むしか選択肢はなかったんですね。
今でこそスマホのない生活は考えられないと皆が言いますがつい最近まで誰もがスマホなしで暮らしていたということを僕らは忘れがちなようです。
過日、ランチタイムに冷蔵庫の在庫を確かめたらオクラとトマトを発見。
こんなスープを思い付きで作ってみました。
ところが作っている最中にこのオクラにしろトマトにしろはるか昔から日本にあった野菜じゃないよなぁなんて考えてしまったのです。
「オクラ? それ何? 食べ物?」
なんて言われてしまう時代はそれほど昔の話じゃない。
そう思ったら野菜は洋風なのに鰹出汁をベースにした和風スープになってしまいました。
その時代の料理人にオクラとトマトを渡して汁物を作ってみてと言ったらこんな感じのスープを作ったんじゃないかな。
【材料】(1人分)
-調理時間:7分-
- オクラ:2本
- トマト缶(ダイスカット):50g分
- オリーブオイル:4g(小匙1)
[スープパート]
- かつお出汁:250g
- 塩:1g(小匙1/6)
- コンソメスープの素(顆粒):3g
[仕上げパート]
- レモン果汁:5g(小匙1)
- 粗挽きブラックペッパー:少々
【作り方】
- 小鍋にトマトとオリーブオイルを合わせて中火にかけ1分炒めます。これに[スープパート]を加えてひと煮立ちさせます。待っている間にオクラのヘタを取って小口切りにします。
- スープが煮立ったらオクラを加えて中火のまま1分茹でて火を止めます。器に移してレモン果汁を加えてひとまぜし粗挽きブラックペッパーを振ればできあがり。
【一口メモ】
- 見た目は洋風ですが鰹出汁がしっかり利いていて風味は和洋折衷って感じなのがちょっと新鮮です。
- お好みでタバスコを振って辛味を加えても楽しいですよ。
- 溶き卵を加えてかきたま風にするのもありです。あと具材は玉ねぎ、人参、茸など冷蔵庫のあり合わせをいろいろ加えるとにぎやかなスープになります。