もしも今ここにタイムマシンがあったなら──「歴史を変えてみたい」なんて野望を抱く人は案外多いんじゃないでしょうか。
「信長が本能寺の変で生き延びていたら」だとか「坂本龍馬が暗殺されずに明治時代に活躍していたら」だとか。
改変後の歴史がどんな風に転がっていくかを見てみたいというのは誰しもが抱く好奇心だと思います。
そんな野望を抱く人が目指す時点は間違っても太平の世が続いた江戸時代の適当な年などではなく「本能寺の変の前日」だとか「近江屋事件(坂本龍馬が暗殺された事件)の直前」といったピンポイントな時点になるはずです。
毎年毎月毎日、なにがしか事件は起きていますし何事もなく終わった年なんてものは歴史上ないのかもしれません。
ただそれでも「その時歴史が動いた」と誰もが感じる大きなできごとが起きた特別な年月日「特異点」は間違いなくあります。
日本の食文化にとっての「特異点」のひとつは太平洋戦争の終結だったんじゃないかなと僕は思っています。
食糧事情の悪さから代用食や代用調味料が考案され、料理の嵩を増すためにそれまでの料理の常識では入れなかったような食材が加えられるようになりました。
そして進駐軍の駐留によって欧米の食文化が一気になだれ込んできた時代でもありました。
1945年から7年間GHQに接収されていたホテルニューグランドの2代目総料理長だった入江茂忠は米兵がケチャップをまぶしただけの具なしのスパゲティを食べているのを見てスパゲティ・ナポリタンを考案しました。
中国の炒麺(チャオメン)から発展した焼きそばは戦前からある料理でしたが元々の味付けは塩か醤油が主流でした。
戦後小麦粉の入手が困難になり嵩増しにキャベツをたくさん入れたところ味がぼやけてしまった。
で、より味の濃いソースを使ったソース焼きそばが広がっていったと言われています。
ソース焼きそば自体は大正期に浅草の店で出していたという文献もあるそうなので発祥というわけではないのでしょうけど大阪で爆発的に普及した背景にはそういったこともあったんじゃないかと推察します。
スパゲティ・ナポリタンとソース・焼きそば。
一見縁もゆかりもない麺料理に見えますが実は同じ歴史的特異点が生み出した時代の申し子だったのかもしれません。
そんな奇縁を持つ料理ならいっそ合体してみたらどうだろうなぁんて深いことを考えたわけでもないのですがある朝目が覚めたら……
「ナポリタン味の焼きそばが食べてみたい」
なんて衝動にかられましてわざわざ業務スーパーまで中華麺を買いにひとっ走り。
こんな料理を作ってしまいました。
【材料】(1人分)
-調理時間:8分-
- 焼きそば:1玉
- 豚バラスライス:2枚(約30g)
- 玉ねぎ:1/4個
- エリンギなどきのこ類:1本
- ピーマン:半個
- サラダ油A:6g(大匙1/2)
- サラダ油B:12g(大匙1)
- (お好みで)粉チーズ:適宜
- (お好みで)タバスコ:適宜
- (お好みで)粗挽きブラックペッパー:適宜
[ソースパート]
- トマトケチャップ:50g(大匙3+小匙1)
- ウスターソース:9g(大匙1/2)
- お好み焼きソース(できればどろソース):9g(大匙1/2)
【作り方】
- 焼きそばは耐熱皿に載せて電子レンジの500ワットで1分チンします。
- 1.をやっている間に豚バラスライスは1cmの小口切りにします。玉ねぎ、エリンギ、ピーマンは細切りにします。[ソースパート]を合わせてよく混ぜておきます。
- 中華鍋かフライパンにサラダ油Aを入れて強火にかけます。これに豚バラスライス、玉ねぎ、エリンギを加えて肉に焼き色が付くまで炒めます。更にピーマンを加えて10秒炒め一旦皿に取ります。
- 3.の中華鍋かフライパンを洗わずにサラダ油Bを加えて強火にかけます。これに焼きそばを入れていじらずに1分焼きます。ひっくり返して更に10秒焼きます。
- 4.に3.を戻して[ソースパート]を加え絡ませながらほぼ水気がほぼなくなるまで炒めればできあがり。お皿に盛ってお好みで粉チーズ、タバスコ、粗挽きブラックペッパーを振って戴きます。
【一口メモ】
- トマトケチャップが主軸なのでナポリタン風味ではあるのですがソースの主張も負けておらずけっこうスパイシーさのある焼きそばになりました。ジャンクで良い感じ。
- 味の要はトマトケチャップとソースの配合。このレシピではケチャップを多めにしていますがより焼きそばらしくしたい方はケチャップを減らしてソースを増やしてみてください。
- あくまでもナポリタンが主軸なので粉チーズとタバスコを使ってみました。逆に青のりにかつお節という焼きそば系アイテムを使うのもありだと思います。