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厨房日誌

ロストテクノロジー

僕が製菓を覚えた30年ほど前、実家のオーブンはガスオーブンでつまみが一つ付いているだけのものでした。

そのツマミを振り切って点火したらあとは庫内の温度計を睨みながらつまみの角度で温度調整。クセを覚えるまでにずいぶん時間がかかった記憶があります。

しかも扉を開けると一気に温度が下がるので食材をはやての如く放り込むのにも技が要りました。今は我が家のオーブンも電気でボタン一つで温度調整。扉を開けてもすぐに設定温度に立ち直ってくれます。

ふと、思うのです。何かの拍子で電気が使えなくなってガスオーブンで調理しないといけなくなったら街からケーキ屋さんやパン屋さんが消えてしまうんじゃないかしらんと。

それくらいガスオーブンの扱いには職人技が要りました。けどね、つまみ一つのガスオーブンにも良いところはあって微妙な温度調整ができるのです。

例えばうちのオーブンレンジ君は180度を規定値にして190、200、210と10度刻みで設定ができますが、186度とか188度といった設定はできません。

ガスオーブンはアナログですのでつまみの角度のクセを覚えればこれができるのです。で、料理によってはその微妙な温度が最高の仕上がりにつながることもあるんですよね。デジタルの限界、アナログの強みと言ったところでしょうか?

カセットデッキがブームらしく、また店頭に並び始めているらしいです。

けれど、かつては当たり前だったオートリバース(カセットをひっくり返さなくてもB面を続けて再生してくれる機能)を搭載したものがないのだそう。

あの機能を作れる町工場がなくなってしまっているらしいのです。オートリバースが登場した80年台からメーカーは自社で作るのではなく外注していたんだなと改めて知りました。

オートリバースが登場した時は「さすが技術の○○」とそのメーカーを絶賛しておりましたが、なんのことはないその○○はそんな高度な技術を持ってはおらず小さな町工場頼みだったというわけです。

同じように町工場だけがそのノウハウを持っている技術はどの業界でも多々あるでしょう。メーカーが無茶を言い過ぎてその町工場が潰れてしまったらその技術は永遠に失われます。

そうすると街からケーキ屋さんやパン屋さんが消滅する事態にだってなるかもしれません。

それどころか、洗濯機も、掃除機も、冷蔵庫も当たり前に使えていた技術が二度と使えなくなることだってあり得るのです。

普段使い慣れている当たり前の機能や技術が案外ほんの一握りの人々によって支えられていて、いとも容易く消滅してしまう可能性のある危ういものだと改めて知りました。

2019/10/29 Tue.

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