アスパラガス、トマト、じゃがいも──
一見、とりとめなく野菜を並べ立てたように見えますが、これらの食材にはある共通点があります。
それは……。
かつて、観賞用として栽培されていて、長いこと"食べられる"と思われていなかったこと。
アスパラガスが観賞用だった理由は生け花と関係があります。
アスパラガスの葉は見た目が優美で繊細。
なので、フラワーアレンジメントや花束を作る際の添え物として扱われてきました。
確かに花瓶に生けてある植物を見て「美味しそう」という発想にはなかなか至らないかも(笑)
日本に伝わったのは江戸時代後期。
持ち込んだオランダ人も観賞用の植物だよと言っていたらしく、そのまま鵜呑みにされたみたい。
食用に転じたのは大正時代以降のことだそうです。
トマトが観賞用だった理由は鮮やかな赤い実。
あの色を昔は「なんて毒々しい色」と怖がられていて、勝手に"毒があるに違いない"と思われたみたい。
確かに、カエンダケなど毒のある植物の中には目を惹くような鮮やかな色をしたものがありますけどね。
そこまで思っていても、見た目はきれいだから眺めていたいと観賞用にしたのが面白い。
海外でも毒があると思われていたらしいのですが、16世紀にイタリアを飢饉が襲った際、なりふり構わず食べた人がいて、「なんだ、普通に美味しいじゃん」となったみたい。
日本には江戸幕府が始まった頃には伝わっていたらしいのですが、食用にされだしたのは明治以降のことだそうです。
そして、じゃがいも。
これも毒があると信じられていて花を観賞する植物とされていました。
この誤解の理由は二つくらいあって、ひとつには本当に毒がある芽を食べて腹痛や吐き気を起こした人がいたこと(かなり強い毒で最悪は死ぬこともあります)。
もうひとつは食べ方がわかっていなくて生で食べたり、熟していないものを食べた人がいたこと……。
って、そりゃ、お腹壊すよ。
この”毒がある”説以外にも、キリスト教徒の中には「じゃがいもは聖書に出てこないから異端の植物である」なんて無茶なことを言い出す人もいたみたい。
聖書は百科事典かよ(笑)
じゃがいもはヨーロッパ原産ではなく、聖書が書かれた時代にはまだ伝わっていなかったので出てこなくて当たり前なのです。
そんなじゃがいもが食用になったのも飢饉のおかげ。
食べるものがなくなって、それまで観賞用か家畜のえさにしていたのを人間も食べるようになったようです。
特にプロイセン王フリードリヒ2世は、国民にじゃがいもを食べることを強制してドイツ方面では早々に食材として定着したみたい。
「食べなきゃ死刑だ」
とお触れを出したなんて風説まであるくらいなので、かなり強硬にやったみたいですね(それって、「毒で死ぬか、首をはねられて死ぬか選べ」って言ってるのと同じでは?)。
今ではごくありふれた洋食の"じゃがいものガレット"も、食材になったじゃがいもをより美味しく食べようと模索した末に生まれたもの。
生まれるに至るまでの道のりは長く、平坦ではなかったみたいですね。
【材料】(1人分)
-調理時間:11分-
- ご飯:90g(約半膳分)
- じゃがいも(中サイズ):1個
- オリーブオイル:8g(小さじ2)
- バター:5g
- 塩、ブラックペッパー:少々
- 片栗粉:9g(大さじ1)
【作り方】
- 熱々のご飯にバターを載せ、半ば以上溶けたらしゃもじでしっかり混ぜ込みます。
- 1.をやっている間にじゃがいもは皮を剥いて縦半分に切ります。さらにこれを2mm厚の薄切りにします。
- ボウルにご飯(バターライス)、じゃがいも、片栗粉を合わせて塩、ブラックペッパーを振り、よく混ぜ込みます。
- フライパンにオリーブオイルを入れて中火にかけます。十分温まったら3.を平らに均しながら円形に成形し蓋をして2分蒸し焼きにします。フライ返しでひっくり返して再度蓋をし、2分蒸し焼きにします。
【一口メモ】
- ご飯にじゃがいもという炭水化物どうしの合体料理。栄養が偏りそうな気はしますが腹持ちはめっちゃ良いです。カリカリの食感がけっこう美味。
- 味付けは洋食っぽく、塩のみにしましたが、お好みでデミグラスソースやウスターソースをかけるのもありです。カレー粉を振っても楽しいですよ。
- ピザ用のチーズをいっしょに焼いたり、半熟の目玉焼きを載せるとちょっと贅沢なおかずになります。