アメリカのジャーナリスト、マルコム・グラッドウェルが提唱した言葉に「1万時間の法則」というのがあります。
「人が何かを習得するためには1万時間の練習が必要である」という説で、スポーツにしろ芸能にしろ何かひとつことを極めるには1万時間以上努力する必要があると彼は提唱しました。
1万時間ってどれくらい?──膨大過ぎてピンと来ない数字ですが1日3時間練習するとして毎日休みなくそれを続ければ9.13年ほどで到達する時間です。
人生の長さを平均70年、子供の頃や老後を除いて実際に何かに没頭できる時期をその半分の35年(=就職してから定年退職するまでの時間)くらいとすればその1/4以上をひとつことに没頭する計算になるわけで想像するだけでくらっと眩暈がしそうですね。
この説には賛否両論あって「まさにその通り」という人もいれば「そんなわけあるかい」という人もいます。
反対意見の論拠のひとつは「凡人が1万時間以上努力してもプロ野球選手になれやしないじゃん」というもの。
全くその通りだと運動音痴の僕は思っちゃいます。
けどその意見を肯定しながらこんなことを言う人もいるんですよね。
「それでも一流のプロ野球選手は例外なく1万時間以上の努力をしている」それもまたごもっともと頷けてしまいます。
この「1万時間の法則」に賛否両論が出る現象を科学的なアプローチで分析してみると意見が割れる理由が見えてきます。
それは──「何かを習得(極める)」できたかどうかを判断する基準が曖昧なことに起因するのだと思います。
「何かを習得(極める)」できた基準が例えばプロ野球選手になれたかどうかならばこの説を否定する人の方が多いでしょう。
プロになれるかどうかは努力だけでなく最初に立っているスタートラインがどこか(プロになれる資質を持っているかどうか)も大きく関係してきますから。
けれど「(1万時間)努力する前の自分と比べたら格段に技術が向上している」という基準であれば賛成意見が多いのではないでしょうか(この「格段」をもっと具体的に定義する必要はありますが)。
この基準ならば努力する前の自分のスタートラインがどこであったかは無関係ですから。
そもそものスタートラインが自分とは違う他人と比べて努力したことによる成果を大きい小さいというのは本来無意味なことです。
昨日の自分に今日の僕は勝つ!
そのためには1万時間といわず何万時間でも努力する。
というのがこの説の本質じゃないかなと僕は思っています。
「カマスは背開きにします」
この料理を作るに際して参考にしたレシピの冒頭の手順にそう書かれていました。
なるほどなるほど──なんて思いながらすすっと包丁を動かして背開きにしてワタを取りながらふと思ったのです。
「10年前の自分はぜったいこんなことはできなかった」
気が付くと1万時間以上、僕は料理を続けていたのかもしれません。
【材料】(1人分)
-調理時間:20分-
- カマス:1尾
- 塩:2g(小匙1/3)
【作り方】
- カマスは背開きにします。頭の付け根に包丁の刃先を当て尾に向かって包丁の刃を撫でつけるように引きます。背に切り目が入りますのでそこに包丁の刃を入れてバイオリンの弓のように前後に引きながら切り目を深くしていき腹の手前数ミリまで包丁を入れれば後は手で開けます。
- 包丁を持つ手に力を入れ過ぎないこと。力を入れなくてもすっと引けば身が切れるように包丁はできています。むしろ力を入れるのはカマスを押さえている他方の手の方で魚が動かないようしっかり押さえましょう。
- 1.のワタを取り骨抜きで骨を抜きます。これを流水で洗ってキッチンペーパーで水気をふき取ります。これをバットに入れ30cmほど上から塩を均等に振りかけます(1尺(約30cm)上から振りかけるので尺塩と呼ばれる技法です)。これを冷蔵庫に入れて30分ほど可能であれば半日休ませます。
- 皮を下にして魚焼きのグリルで10分焼きます。ひっくり返して更に5分焼けばできあがり。
【一口メモ】
- 身がもっちりしていてとても美味しい魚です。脂の乗りも程よくてしつこくはないのであっという間に食べられちゃいます。
- お好みでスダチやレモンの果汁を絞ると清涼感が増して美味しいですよ。
- カマスの旬は年に二度、春(6~8月)と秋(9月~12月)に来ます。特に秋のカマスは脂が乗っていて味が良いと言われますので機を逃さず戴きましょう。
- 工程2.の骨抜きの作業は面倒に感じるかもしれませんがこれをやっておくと食べるのがぐんと楽になりますので頑張りましょう。
- 魚を捌くのって難しそうって感じる方もいらっしゃるかもしれません。けど断言しますが上達するコツはたったひとつ。反復練習あるのみです。しょっちゅう捌いていれば嫌でも上達しますので失敗を恐れずにチャレンジしましょう。