僕がまだ新人SEだった1980年代終わり頃のお話。
お客様のホストコンピュータの保守作業で、保守用のパスワードを先輩に尋ねたら、「秘密や」とそっけなく言われました。
「いやいやいや、作業できないじゃないですか、教えてくださいよ」
と言っても、「だから、“ひみつ”や」と言うばかり。
しばし押し問答の末、ようやく謎が解けました。
もうそのコンピュータはこの世にありませんし、バラしても何の差しさわりもないでしょう。
そう、パスワードは漢字二文字で「秘密」だったという(笑)
まだWindowsサーバすら世に出ていない時代。
メーカー独自OSならではの仕様で、パスワードに漢字OKというのは盲点でした。
シンプルだけど、なかなか想像もイメージもできない――良いパスワードだったと思います。
似たエピソードが「ラーメン大好き小泉さん」の中にも出てきました。
主人公・小泉さんのクラスメイトが幼少期、大阪の親戚の家に行ったときに食べた、近所のラーメン屋の料理名がどうしても思い出せない!
彼女は兄にLINEでラーメンの名前を尋ねるのですが、返ってきたのは
「ああ、あれな、『おいしいラーメン』だ」
というにべもない返事。
「味の感想なんか訊いてないよ」
と喧嘩になってしまうのですが、実は道頓堀・神座(かむくら)の看板ラーメンの名前は本当に「おいしいラーメン」だったというオチがつきます。
(このお店も、料理名も実在します。)
なかなかフックの効いたネーミングだとは思うのですが、「想像もイメージもできない良い料理名」とは言い難い。
そこがパスワードのエピソードと似て非なるところだと思います。
料理の名前は、それを聞いただけでどんな料理かイメージできるものが、良いネーミングだと僕は思っています。
たとえば北アフリカの料理に『バミア』というのがありますが、これは現地の言葉でオクラという意味。
つまり、使っている食材がそのまま料理名になっちゃってるんですよね。
あのエリアには、そういった料理名が多いそうで――これでは何を使った料理かはわかっても、どんな料理かはちっともわからないと思います。
逆にフランス料理を日本語で表記すると、材料名と調理法、さらにソースの説明まで付いて、やたら長くなりがちです。
『ブルターニュ産オマール海老のコンソメゼリー寄せキャヴィアと滑らかなカリフラワーのムースリーヌ』みたいな(笑)
これはこれで情報過多な気がして、「誰もそこまで訊いてないよ」ってちょっと言いたくなっちゃう。
『カインチュア』は、ベトナムの酸っぱいスープです。
ベトナム語で「カイン(canh)」は「澄んだおつゆ」、「チュア(chua)」は「酸っぱい」という意味だそう。
料理名を聞いただけで「あ、酸っぱいスープなんだな」と誰でもわかります。
料理名はこうでなくっちゃ、なんて思ってしまう好例ですね。
【材料】(1人分)
-調理時間:10分-
- トマトまたはミニトマト:40g
- しめじ:1/4株ほかの茸でもOK
- (あれば)オクラ:2~3本
- 生姜:スライス1枚
- サラダ油:4g(小さじ1)
- レモン果汁:5g(小さじ1)
[スープパート]
- 水:200ml(カップ1)
- 塩:2g(小さじ1/3)
- 鶏がらスープの素:小さじ1/2
【作り方】
- トマトはヘタを取って1.5cm角の賽の目に切ります。ミニトマトを使う場合は半分に切ります。しめじはこぶさにほぐしておきます。オクラはがくを落として3等分の斜め切りにします。生姜は千切りにします。
- 小鍋にサラダ油と生姜を入れて弱火にかけます。香りが立ってきたらトマトを加えて中火で1分炒めます。
- 2.しめじを加えてざっと混ぜたらあとはいじらず中火で1分、軽く色が付くまで焼きます。
- 3.に[スープパート]を加えてひと煮立ちさせます。弱火で2分煮てオクラ、レモン果汁を加えて再度ひと煮立ちさせたらできあがり。
【一口メモ】
- トマトとレモンの酸味が心地よい、夏場にぴったりの一杯。冷製も良いけど、夏でも熱々を飲みたくなります。
- カインチュアは本来、スターフルーツやタマリンドなど酸味の強い果物を使いますが、今回はレモン果汁で代用。これでも十分本場の気分が味わえます。
- 主菜が辛い料理の献立に特におすすめ。辛味を緩和して、良い箸休めになってくれます。