2005年に公開された『ALWAYS三丁目の夕日』は、最終興行収入32.3億円、観客動員数は284万人だったそうです。
つまりざっくり言うと──とってもたくさんの人が観たということですね(ざっくりしすぎだろ(笑))。
感想や感動は観客ひとりひとり様々だったと思いますが、昭和39年生まれの僕の世代くらいを限界ラインとして、僕より上の世代と下の世代では作中に登場する風景や日用品に対する思い入れが大きく分かれたんじゃないかなと想像します。
例えば、台所の風景ひとつとっても──若い世代から見れば「映画の小道具」。
「昔の人はこんなのを使って料理していたんだなぁ」と思ったんじゃないでしょうか。
ところが、僕より上の世代にとっては、それは小道具ではなく、**自分や母、祖母が実際に使っていた“リアル日用品”**に見えたと思うのです。
たらい、洗濯板、モノクロテレビ(当時は「白黒テレビ」って呼んでましたね)、毎週放送されていたプロレス中継──それらは異世界の出来事でもなんてもなく、今と地続きの時代に、自分の目で見て、手で触れ、日常的に使っていたものだったはずです。
けれど、そうした道具たちもいつの間にか家の中からなくなっていき、そして──そんなものがあったこと自体、忘れてしまっていたなぁ……
と感じた“御同輩”は多かったのではないでしょうか。
そこまで時間を遡らなくても、家の中のこまごましたものは日々変わっています。
たとえば、僕が結婚したのは1996年ですが、その頃うちのキッチンには鰹節と出汁昆布が常備されていました。
『美味しんぼ』全盛の時代──「だしの素で取った出汁は本物じゃない! 本物の出汁というものは……」なんて、全力で思っていたものです(笑)。
ところが今では、かつお節も出汁昆布も置かなくなり、代わりに「リケン素材力だし」シリーズの粉末出汁を常備しています。
食塩・化学調味料無添加で、要するに鰹節や昆布を細かく粉砕した商品ですが、十分に美味しい出汁が取れるのです。
料理のプロの中にも愛用者がいるそうで、「もうこれで良いじゃん」と思うようになりました。
調味料も一時期は甜麺醤・豆鼓醤・XO醤など中華系調味料に凝って、冷蔵庫にズラッと瓶やチューブが並んでいましたが、今ではだいぶシンプルになって豆板醤とオイスターソースくらいしか置いていません。
醤油・酒・味醂といった基本の調味料は変わらず常備していますが、以前は「本物の醤油というものは……」などと山岡さん(『美味しんぼ』の主人公)にかぶれておりました。
けれど、ああいう「本物」シリーズってとにかく高い! 今では、「本物の醤油が美味しいのは知ってるけど、上を見たらキリがない」と割り切り、近所のスーパーで一番安いやつを愛用しています。
来年で結婚してから30年。
キッチンに並ぶものもずいぶん変わってきましたが、意外としぶとく生き残っている調味料もあります。
そのひとつが──ナンプラー。
エスニックっぽいテイストを出したいときに重宝していて、なかなか手放せません。
たとえば、こんなスープを飲みたいと思ったとき。
いつも助けられています。
【材料】(1人前)
-調理時間:20分-
- エリンギ:半本
- 刻み葱:少々
- 水:240ml
- レモン果汁:5g(小さじ1)
[調味料&スパイスパート]
- (手持ちのないものは省いても構いません)
- ナンプラー:6g(小さじ1)
- コンソメスープの素(顆粒):2g
- クミンパウダー:少々
- ガラムマサラ:少々
- チリパウダー:少々
- コリアンダーパウダー:少々
【作り方】
- エリンギを3mm厚にスライスし更に7mm幅の細切りにします。
- 小鍋にエリンギ、水を合わせて蓋をし、強火で1分半温めます。蓋を取ってごく弱火にし、10分煮込みます。 ※エリンギは水温70?80度のレンジで最も旨味成分が引き出せます。強火で一気に70度付近まで水温を上げ、そこからごく弱火で時間をかけて水温を上げていくのがダシを挽くコツです。
- 2.に再度蓋をして中火にかけひと煮立ちさせます。これに[調味料&スパイスパート]を加えて蓋をし、3分煮込みます。
- 火を止めて蓋を取り、レモン果汁を加えてひと混ぜします。器によそって刻み葱を散らせばできあがり。
【一口メモ】
- スパイスの刺激的な香りの奥にエリンギ独特の旨味が潜んでいます。味はやや薄めに設定してあるので、飲み飽きないスープに仕上がっています。
- カレー炒飯の付け合わせに作ったのですが、東南アジア系のおかず全般に良く合います。アジアンテイストの献立で迷った時には、ぜひ思い出してください。
- 味見して物足りなければ、塩・胡椒で調えてください。