ずっと昔からのご近所さんだと思っていた人がお正月に食べるお雑煮の話題をしてみたらうちと全然違った──なんてことは往々にしてありそうなことです。
で、よくよく訊いてみるとご両親がよその土地のご出身で子供の頃からそのお雑煮だったとかなんてね。
お正月が近づくとありがちな話題ですが僕は子供の頃からお雑煮の話題を振られるたびになんだかもやっとした気分になることが多かったのです。
僕の両親は香川県の出身(母が生まれたのは徳島市なのですがその両親は香川出身なので実質食文化は香川でした)。
香川で定番のお雑煮は「白味噌に餡入りの餅」を入れたものなんですよね。
それを聞いた友人たちは異口同音に「気持ち悪っ」と申します。
いやいやいや、ぜんざいには小豆と餅が入っているでしょうが。
あれを味噌仕立てで作ってるだけだよと力説するのですが聞いてもらえません。
「そう言わずにいっぺん試してみ」と言っても「無理っ」と断固拒否。
……。
美味しいんだけどな。
僕自身は子供の頃から食べ慣れていますのでなんの違和感もないのです。
好きなものをディスられているようでもやっとはするのですが彼らの言い分もわからないでもないのです。
「スープは塩気のある調味料で味付けするもの。激辛スープはありだけど甘いスープというのはなしでしょう」
という意見には僕も頷いちゃいます(注:餡入り餅の雑煮を除く)。
けど世界は広いもので甘いスープというのも存在するんですよ。
ハンガリーでは前菜の前にフルーツをふんだんに使った甘いスープが出されます。
夏は冷製で。
冬場は温めて。
『ヒデグ・メッジュレヴェシュ』と呼ばれるスミミザクラの実(要はさくらんぼ)を使ったスープが特に有名かな。
もっと身近な例だとコーンポタージュだって生のトウモロコシから本格的に作ればかなり甘いスープになります。
あるいはクリスマスには定番のパンプキンスープは思いっきり甘いじゃないですか……
と、力説しても餡入り餅の味噌スープは別物って言われるんだろうなw郷土料理の中でも甘いスープは香川の専売特許ではありません。
例えば鹿児島名物のこの汁物はサツマイモが入っていてほっこり甘いのです。
過日、豚汁の原型とも言われるさつま汁を作りながら「やっぱ餡入り餅の雑煮とは別物か」なんて自虐めいたことを考えておりました。
【材料】(2人分)
-調理時間:20分-
- 出し汁(昆布出汁):300g(カップ1.5)
- 鶏もも肉:50g または鶏胸肉50gでもOK
- さつまいも:50g
- 具材:大根、人参、ごぼう、椎茸、こんにゃくなど根菜、茸類をあり合わせで見繕ってください。
- 味噌:24g(大匙1+小匙1)
【作り方】
- 鶏もも肉は一口大に切ります。さつまいもは皮付きのまま7mm厚のいちょう切りにします。具材も食べやすい大きさに切ります。ごぼうは水(分量外)に5分晒してアクを抜きます。こんにゃくは5分茹でてアクを抜きます(あく抜き不要と書かれている場合はこの手順は不要です)。
- 小鍋に出し汁と具材を合わせて強火にかけひと煮立ちさせます。これに鶏肉を加えて中火で3分煮ます。更にさつまいもを加えて8分煮ます。
- 2.に味噌を加えてよく溶けばできあがり。
- この際、煮汁が煮立たないよう火を弱めてください。煮立つと味噌の風味を損ないます。
【一口メモ】
- サツマイモが入っているのでほっこり甘いちょっと不思議な風味のお味噌汁です。慣れるとヤミツキになりそうな味だな。
- さつま汁は豚汁の原型と言われ豚肉や鶏肉と根菜を中心にした野菜を具材にします。本式は鶏肉を使うとのことなのでこのレシピではそれに倣って鶏むね肉を使っていますが鶏の他の部位や豚肉でも美味しく作れますよ。
- サツマイモは皮に繊維質がたっぷり含まれていますのでぜひ皮付きのまま使ってみてください。