浅田次郎の初期の短編連作シリーズに「きんぴか」というのがありました。
やくざの鉄砲玉になった挙げ句、刑務所から帰ってきた男。
ピストル自殺を試みたけど弾が頭蓋骨をすり抜けて生き残った屈強な自衛官。
先生の汚職の罪を被った議員秘書。
ひとクセもふたクセもありそうな男たちとその周辺の怪しい人たちが織りなす悲喜劇を描いた名作です。
作中、バブル景気に乗って急に成金になっちゃったヤクザの幹部が出てくるのですが、表向きは社長と呼ばれ豪邸に住んでも落ち着かない。
奥さんも「こんな暮らし、なんか間違ってるよ。あの借家に戻ろうよ」みたいなことを言う。
娘はバイオリンなんかを習い始めるけどなんか垢抜けない。
で、結局はでっかいリビングの隅にちゃぶ台を置いて家族3人で口がひんまがりそうな塩鮭をかじるような生活をやってたりするんですよね。
さて、この料理、見た目は洒落た洋食ですが。その実態は一切れ数十円の塩鮭とトマト缶を使った材料費100円ちょっとのチープなおかずです。
口の中にじわっと広がる塩辛い鮭の味を噛み締めているとなんだかあの小説を思い出しちゃいました。
【材料】(2人分)
-調理時間:10分-
- 塩鮭(甘塩):2切れ
- オリーブオイル:12g(大匙1)
- 粉チーズ:適宜
- ドライパセリ:適宜
[ソースパート]
- トマト缶(ダイスカット):1/2個(200g)
- コンソメの素(顆粒):3g
- 粒マスタード:小匙1
- オレガノ:少々
- ブラックペッパー:少々
【作り方】
- フライパンにオリーブオイルを入れて中火にかけ塩鮭を加えて蓋をし、両面軽く焼き色が付くまで3分ほど蒸し焼きにします。
- 1.に[ソースパート]を加えて蓋をし、中火で7分煮ます。
- 2.のソースを皿に盛り付けその上に鮭をトッピングします。粉チーズとドライパセリを振ればできあがり。
【一口メモ】
- じんわりと塩が利いている鮭に酸味と甘みのあるトマトソースが良く合います。チープな材料を使っているとは思えないごちそう感が楽しめますよ。
- 見た目に反して手順はとても簡単。10分もあればできてしまうクイックさが嬉しいですね。
- 一緒に玉ねぎ、人参、下茹でしたブロッコリーなどを添えるといよいよ本格的な洋食っぽくなります。ありあわせで構わないのでぜひプラスしてみてください。