2024年、米がお店から消えたり、やっと並んだと思ったらとんでもなく高騰していたりと、大騒ぎが続いていた最中、時の農水相が
「(僕は)コメを買ったことがない。支援者がたくさんくれるので」
と発言して物議を醸しました。

僕は大炎上しているSNSをちらっと覗いただけですが、彼の発言に対する感想はシンプルにひとつだけ。
「そういうことは口に出して言っちゃダメでしょ」
口に出して言うのはいかがなものかとは思いますが、親戚・知人に農家や漁師さんがいらっしゃる方なら似た経験をお持ちの方は案外多いのではないかと推察します。

かくいう僕も子供の頃、父母が蜜柑をお店で買っている姿を見たことがありませんでした。
にもかかわらず炬燵の上には、いつも山盛りの蜜柑がざるに盛られていたんですよね。
では、その蜜柑はどこから来ていたのかというと──。
父の親戚に四国で蜜柑山を経営されている方がいて、「今年もたくさん実ったから」と毎年段ボール何杯もの蜜柑を送ってくださっていたのです。

もちろん相応のお返しはしていたのでしょうが、その蜜柑自体の代金を父が送金していたそぶりはありません。
こんなふうに0円で流通している農作物というのは案外あるんじゃないかなぁ。
こういった季節の贈り物は家計を助けてくれますし、基本的にはありがたいのですが──程度問題で、時には困ってしまうこともあります。

数年前、お年賀で実家に顔を出した時のこと。
庭に見慣れない木が植わっていました。
母に訊ねると「去年植えたローズマリーだよ」とのこと。
ローズマリーは肉のローストなどに使うと爽やかな香りが付くハーブです。

スーパーなどで買うとそこそこ良いお値段がするので「ちょっと分けておくれ」と母にお願いしました。
母は快諾してくれたのですが……僕は失念していたのです。
彼女が加減を知らない人だということを。
帰り際に「さっき摘んできたよ」と渡されたのは──でっかい笊いっぱいのローズマリーの枝葉。

言っておきますが、ローズマリーは野菜ではなく、あくまでも“ハーブ”です。
丸鶏のローストを作ったって、一枝か二枝あれば事足りるんですよ。

その量は、控えめに言って一生かかっても使い切れなさそうなくらいありました。
「いや、こんなに要らないから」と押し返そうとしたのですが、「何を言うか、もう摘んでしまったのだから、持って帰りなされ」と押し戻される。
結局、押し切られてローズマリー入りの巨大なビニール袋を抱えて電車に乗る羽目になりましたとさ。
その後、インド料理店をやっている知人におすそ分けするなどして、だいぶ目減りはしたのですが、我が家の冷蔵庫には未だにローズマリー入りのガラス瓶が鎮座しています。

冷蔵庫を開けてそれが目に入る度に、こんな感じの料理を作ってはせっせと使っているのでした。
とはいえ、量さえ加減してもらえればおすそ分けはいつでもウェルカムですよ──と、実家にいる母に向かってテレパシーを送っておきましょう。
【材料】(1人分)
-調理時間:12分-
- じゃがいも:中サイズ1個または小サイズ2個
- ローズマリー:1枝
- 塩:1g(小さじ1/6)
- 粗挽きブラックペッパー:少々
- オリーブオイル:6g(大さじ1/2)
【作り方】
- じゃがいもは皮付きのまま、中サイズなら6つ割り、小サイズなら4つ割りにします。これを5分間、水(分量外)にさらします。
- じゃがいもの水気をふき取り、耐熱皿に並べます。ラップをかけて串で数か所穴を開け、電子レンジ500Wで3分加熱します。待っている間にローズマリーを粗みじんにします。
- フライパンにオリーブオイルとローズマリーの半量を入れて中火にかけます。香りが立ってきたらじゃがいもを加えて1分炒めます。
- 塩、ブラックペッパーを加えてざっくり和えます。じゃがいもを器に移し、残りのローズマリーを散らしてざっくり混ぜればできあがり。
【一口メモ】
- 塩、胡椒のみの味付けで、いわばフライドポテトやポテトチップスのような“ジャンクな料理”ですが、ローズマリーの香りが加わると上品な副菜に変身するから不思議ですね。
- カツレツなど肉料理の付け合わせによく合います。単品でも良いおつまみになるので、ビールのお伴にぜひどうぞ。
- ローズマリーの代わりにタイムやドライバジルなどを使っても風味が変わってまた楽しいですよ。

