サイコロを振って奇数が出るか偶数が出るかを当てるゲームをしたとします。

もし、3回続けて偶数が出た場合、「次の4回目はそろそろ奇数が出るんじゃないか」と考える人はけっこういると思うのですが……、それは勘違いです。
これからサイコロを振って出る目は、前の3回で何が出たかには全く関係がありません。
なので次に奇数が出る確率はやっぱり1/2なのです。
ギャンブル好きで山っ気の多い人ほどこの発想に陥りやすいことから、この勘違いのことを「ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)」と呼びます。

誤謬とは論理的な推論の過程における誤りや、事実に基づかない間違い、正しくない判断や思い込みを指す言葉ですね。
分かりやすい例を挙げましょうか。
これを聞くと婚活を頑張っている人は悲観的になるかもですが(笑)
異性に告白をしてOKをもらえる確率を5%程度とします。

20人に1人くらいの割合でお付き合いできる確率ですね。
ならば連続して20人にアタックしたら誰か1人くらいはOKしてくれるだろう──と考えるのがまさに「ギャンブラーの誤謬」です。
1人目に告白して振られる確率は95%、2人目に告白してやっぱり振られる確率も95%。
けど、2人続けて振られたからといって、3人目がOKしてくれる確率が上がるかと言うと、そんなことはなくて、やっぱり95%の確率で振られるのです。

20人の異性に告白して誰か1人にでもOKがもらえるという状態は、"20人全員に振られる"以外の状態と同義です。
つまり、1人以上にOKをもらえる確率は1から20人全員に振られる確率を引いたものです。
めんどくさい数式の解説は省きますが、その確率とは1-0.95の20乗で表せます。
0.95の20乗は約0.36。
つまり誰かとお付き合いできる確率は1-0.36=0.64。
たった64%くらいなんですね。

理屈ではわかっても、なんか納得のいかないような低さです。
この誤謬を料理に当てはめてみましょうか。
小さじ1の醤油を100mlのだし汁で伸ばした煮物Aと同量の醤油を50mlのだし汁で伸ばした煮物Bを考えてみてください。

明らかに味はBの方が濃いので摂取する塩分が高いと錯覚しそうです。
けど、どちらも小さじ1杯の醤油を使っているので摂取する塩分は同じなんですね。
それでも味が濃い分、少量で満腹感、満足感が高いのは煮物Bの方、僕らはまんまと味の濃さに騙されているのです。

この誤謬を応用した料理がこっくり煮です。
こっくり煮とは醤油、みりん、砂糖などをベースに、甘辛くしっかりと煮詰めた、味にコクと深みがある和風の煮物。
"しっかりと煮詰めた"というところがポイントで、加える塩分はそのままに、煮汁の味を濃くして満腹感、満足感を上げることができます。
食糧事情が良くなかった時代に乏しい食材でもお腹いっぱい食べた気になれる先人の知恵です。

食べ過ぎを抑えることもできるのでダイエット中の人にもおすすめですよ。
ギャンブルの世界では胴元はギャンブラーの誤謬を大いに利用して客の散財を煽ったりします。
けど、料理の世界では「おいしかったなぁ」と客や家族を喜ばせることができる──
こんな誤謬なら大歓迎だと思ってしまいます。
【材料】(1人分)
-調理時間:20分-
- 大根:4cm分
- 鶏むね肉(皮付きのままでOK):120?150g
- 薄力粉:4.5g(大さじ1/2)
- サラダ油:6g(小さじ1)
- 刻み葱:少々
[下味パート]
- 酒:7.5g(大さじ1/2)
- 塩、ブラックペッパー:少々
[煮汁パート]
- 水:100g(カップ1/2)
- 濃口醤油:18g(大さじ1)
- 酒:15g(大さじ1)
- 砂糖:9g(大さじ1)
【作り方】
- 大根を下茹でするお湯(分量外)を沸かします。待っている間に大根を1cm幅のいちょう切りにします。鶏肉は食べやすい大きさに切り、[下味パート]をまぶします。 ※大根の皮は剥かずに使うと皮の周りの栄養素も摂れるのでおすすめです。煮込みに時間がかかるのが難点ですが、このレシピでは下茹でする手順にしているので問題ありません。
- 湯が沸いたら大根を加えて蓋をし、中火で5分下茹でします。茹で上がったらざるに上げて湯切りします。
- フライパンにサラダ油を入れて中火にかけます。これに大根と鶏肉を[下味パート]ごと加えて肉にしっかり目に焼き色が付くまで焼きます。
- 3.に[煮汁パート]を加えてひと煮立ちさせます。落し蓋をして弱めの中火で10分煮こみます。 ※落し蓋がなければアルミホイルを被せてください。
- 4.の落し蓋を取って煮汁が1/3程度に減るまで煮込めばできあがり。器に盛って刻み葱を散らして戴きます。
【一口メモ】
- こっくり煮とは煮汁をしっかり煮詰めて味を濃くした煮物です。コクが深くなるので低カロリーの食材(鶏むね肉、大根)を使っても満足感が高く食べ過ぎを抑えます。ダイエットにもおすすめですよ。
- 大根は下茹ですることで表面の細胞膜を壊し、味を沁みやすくする効果があります。
- 急ぎの場合は電子レンジで加熱するのもありですが、加熱が強すぎるのでできれば茹でてください。お米のとぎ汁で茹でるとえぐみやアクを抜く効果がありますよ。
- 大根の煮物のレシピでは皮をかつら剥きする手順のものを多く見かけますが、これは皮があると煮込みに時間がかかるデメリットに対する配慮だと思います。反面、皮付きのままにすれば煮崩れしにくく皮の周りの栄養も摂れるので実はおすすめ。このレシピのように下茹でする手順を踏めば煮込みに時間がかかるデメリットも解消されます。

