人は自分の地元の名所には足を運ばない──という法則は確かにあると思います。
たとえば横浜に単身赴任したての頃、僕は週末になる度にあちこちの観光名所を見て回りました。
中華街、港の見える丘公園、鎌倉、湘南などの近場から足を伸ばして上野、浅草などもうろうろ。
西郷さんの写真を撮ったり、美術館に入ったり、名物と呼ばれる料理も片端から食べまくりました。
反面、神戸生まれの神戸育ちのくせに60歳になる今に至るまでポートタワーすら登ったことがないという。
異人館通りなどは昔住んでいた家の近所だったので毎日のように散歩していましたが景色を見慣れ過ぎて観光しているという気分は全然なかったな(笑)同様に家の近所にグルメサイトで高評価のお店があっても案外行かないものかもしれません。
「ま、いつでも行けるし」
なんて考えちゃうんですよね。
で、ある日その店の前を通りかかったら「長い間ありがとうございました」なんて紙が貼られているのを見て「あ、お店をたたんじゃったんだ。一回くらい行っておけば良かったな」なんて益体もない後悔をしたりして。
そういえば「来月いっぱいでお店を仕舞います」なんて告知をした途端にお店に長蛇の行列ができたなんて話もよく聞きます。
8月31日になって慌てて宿題に取り掛かる小学生みたいでなんともみっともない話ですがそれも人の性なのでしょう。
2024年8月、お店からお米が消えました。
スーパーにもドラッグストアにも家電量販店の食料品売り場にすら一袋の米もなくすがすがしいくらいにすっからかんになった棚をあっちでもこっちでも見かけました。
そんな状態で1週間が経ち、2週間が経ち、1カ月が経っても一向に棚にお米が並ぶ気配はなし。
「もしかしてこの状況は永遠に続くのか?」
んなわけないのですがなんだかその「永遠」を信じてしまいそうな状況が続きました。
幸いお米がお店からなくなる直前にお米を買ったばかりだったのでしばらくは大丈夫そうだったのですがそれでもいずれお米の買い置きも尽きます。
そうしたら……
「いつの日かお米がお店に並ぶその日までご飯が食べられない!」
なんて考えてしまいまして急にご飯ものが食べたくなっちゃいました。
丼? オムライス? お粥? 炒飯? それから、それから。
あれもこれも。
さながら明日には店をたたむ名店で最後のオーダーをすべくメニューとにらめっこする気分。
で……
けっきょく作ったのがこの「猫まんま」だったという。
いやもうちょっと他に食べたいご飯ものはなかったのかよ。
2024年9月半ばを過ぎた今。
スーパーにはお米が普通に並んでおります。
あれだけおびえた「永遠」はたった1カ月で終わってしまったなぁ。
って、がっかりしたみたいに言うなよ。
【材料】(1人分)
-調理時間:6分-
- ご飯:1膳分
- かつお節:ひとつかみ
- 天かす:適宜
- 椎茸:1本
- サラダ油:4g(小匙1)
- 卵:1個
- 蕎麦の本返し:大匙1またはめんつゆ大匙1
[椎茸の佃煮パート]
- 濃口醤油:9g(大匙1/2)
- 味醂:6g(小匙1)
- 砂糖:3g(小匙1)
- 実山椒:2~3粒または粉山椒少々
【作り方】
- 湯呑みに卵を割り入れて水大匙1(分量外)を加え電子レンジの500ワットで40秒チンします。穴あきお玉を使って水を濾します。
- 1.と並行して椎茸の石突を取り傘、軸ともに細切りにします。フライパンにサラダ油4gと椎茸を入れ中火にかけて1分炒めます。[椎茸の佃煮パート]を加えて炒りつけながら水気がほぼなくなるまで炒めて火を止めます。
- 丼か大ぶりの茶碗にご飯を盛りつけます。その上にかつお節、天かす、1.の卵、2.の椎茸を盛り付け蕎麦の本返しを回しがければできあがり。
【一口メモ】
- ちょっと贅沢な気分に浸れる猫まんまです。定番のかつお節以外にもご飯との相性ばっちりな具材をいろいろ載せてみました。
- トッピングは混ぜずに三食丼の要領で分布を作って盛り付けてください。そうすれば食べ進める度に違う味の具材とご飯を合わせて食べられて味の変化が楽しめます。
- 要はご飯の友の全部載せバージョンといった料理です。このレシピで書いたトッピングは一例ですのでお好きなご飯の友を適宜加えて楽しんでください。