僕が物心ついた昭和40年代はテレビ時代劇の黄金期。
毎日、何かしらお侍さんが刀を差して歩いているドラマをやっていました。
僕の父はそんな時代劇のファンだったのですが、番組の演出にツッコミを入れるというちょっと変わった趣味がありました。
例えば「おい、その侍はさっき切られたぞ」とテレビに向かって言ってみたりするのです。
どうも、殺陣のシーンでは敵の数を多く見せるために、切られた侍がカメラが切り替わったら起き上がってまたかかってくる──というようなことをやっていたらしい。
しかし、端役の俳優さんの顔なんてよく覚えてるなぁ(笑)
町人同士が居酒屋で一杯、なんてシーンでは「いや、江戸時代の町人は貧しくてめったに酒なんか飲めなかったんじゃないのか」なんて言ったりもしていましたね。
けれど、これは父の認識の方が誤り。
江戸市中の町人たちの飲酒量は現代の平均飲酒量の3倍くらいだったという記録があるそうです。
もっとも当時の酒のアルコール度数は低かったそうなので、一概にリットル換算で比較できないのですが。
彼らの飲酒スタイルは居酒屋で一杯という店飲みが主流。
これは居酒屋文化が発展していたというのもあるのでしょうけど、家飲みのハードル、特に肴を自炊するハードルが今よりずっと高かったということもあると思います。
今なら、買い置きの冷凍食品をレンチンすればすぐに肴にできますが、当時は家で自炊しようと思ったら竈に火を熾すところから始めないといけませんでしたから。
ならばと、酒と肴を買って帰って家で一杯──なんてするくらいなら、居酒屋にちょっと寄って酒と肴を楽しむ方がよほど手軽だったのでしょう。
僕も店飲みは大好きです。
居酒屋に行かなければ決して出会うことのなかった知人もたくさんいますので、それだけでも得難い経験だったと振り返って思います。
けれど、横浜に引っ越して飲み友達ゼロから店飲み生活を仕切り直した頃から、家飲みもけっこう楽しいなと思うようになりました。
特に、コロナ禍からこちらは、めっきり家飲みの回数が増えた気がします。
家飲みの魅力は何より気軽なこと。
部屋着で飲み始めて眠くなったらすぐに布団に入れることです。
なんなら、布団の上で飲んでおけば、そのまま体を倒すだけで睡眠モードに移行できます(をい)。
そして、安上がりなこと。
お酒を量販店などで安く買って、肴は自分でこしらえれば、出費はお店で飲むよりぐっと安くなります。
それから、時間に縛られないこと。
店の看板時間を気にする必要もなし。
真夜中に好きなアニメを観ながら飲む酒はまた格別です。
けど、面倒なことも多いんですよね。
肴は自分でこしらえないと誰も作ってくれないですから。
酔いが進めばしまいにはポテチの袋を開けて……、"自炊キャンセル"に逃げたりもするのですが、できればちゃんと作った料理を食べたい。
けど、飲んでいる最中に肴が切れたからといってキッチンに立つのは億劫──江戸時代の人が見たら「ぜいたくな悩みだ」と笑われそうですが、そんなジレンマに悩まされます。
そこに救いの手を差し伸べてくれるのが、このレシピのような"切って混ぜるだけ系"の料理。
材料を切って調味料と器に合わせて混ぜるだけ。
火を使うこともないので、なんならアニメの続きを観ながらだって作れちゃいます。
覚えておいて損のない1皿ですので、ぜひお試しあれ。
【材料】(1人分)
-調理時間:6分-
- きゅうり:2本
- ツナ缶:1缶
[調味料パート]
- めんつゆ又は蕎麦の返し:小さじ2
- マヨネーズ:8g(小さじ2)
- ごま油:2g(小さじ1/2)
- 鶏がらスープの素:小さじ1/2
【作り方】
- きゅうりはヘタを取って塩もみし、3mm厚の斜め切りにします。
- ボウルに[調味料パート]を合わせてよく混ぜます。ツナ缶は漬け汁ごと加え、きゅうりと一緒によく和えればできあがり。
【一口メモ】
- にんにくの風味が利いた鶏ガラスープにごま油。そこへ、マヨネーズにめんつゆですと? こんなん旨いに決まってる。なにげに、ツナ缶の漬け汁も侮れない旨味があるので、ぜひ一緒に加えて、味付けに使っちゃいましょう。
- 晩酌をしていて肴が切れた時にたいへん助かるレシピです。少々、寄っていたってパパっと作れちゃいますよ。
- 具材はサラダに使える食材ならなんでもありです。冷蔵庫の中身と相談していろいろボリュームアップしてみてください。